The book selection by Edmondson


音楽と本と人の〈あいだ〉を繋げ合う

『lecteur 〈 〉 liseur 』

 

ammelでセレクトした音楽。それらを創ったアーティストの方々に、ammelのために選書をして頂く企画です。

第三弾は、以前音楽の解説もして頂いた(ページはこちら)ニューカッスル出身のDj/プロデューサー Edmondsonです。

2006年頃からすでに制作を始めていたという彼の2016年リリース「Flamingo Tripper」収録「Diamond Life」に没頭して幾星霜。着実にリスナー数を増やしているEdmondson、実はammelの準備を始めてから、初めてレコードを入荷させてもらったのが彼のレーベル「lissoms」からでした。そして、この企画で初めて選書を快諾して頂いたのも、他ならぬ彼でした。この場を借りてお礼を改めて伝えたいです。Thank you!!

 

「ここ数年はノートパソコンやデジタル形式にばかり時間を取られてしまい、長編読書の習慣がすっかり減り、その代わりに短い記事や論考を読むことが増えてしまった。だけど、過去の愛読書のひとつは、ジュノ・ディアスの「オスカー・ワオの短く素晴らしい人生」だね」

 

ー 私も教えていただいた後、この本の日本語訳を読み、一気に読了しました!世界的に高く評価されているだけあって、語りの視点が変わることで様々な問題やテーマが浮かび上がってくるその構成は非常に興味深かったです。改めて、この本を選書していただいた理由や背後にある思いをお聞かせください。

 

「それを読んだのは数年前だから、細かい部分についての記憶は曖昧。でも、この本を手に取るきっかけとなったのは、友人が以前の作品『Drown』のコピーを拾ってきたことだった。彼らはそれを通りのゴミの中から見つけたんだ!」


「私はずっと人口動態や異なる文化の移動や交錯に興味を持ってきたけど、『Oscar Wao』は、ディアスが子供の頃ニュージャージーに移住した後のドミニカ系アメリカ人の経験を描いた優れた(そして大部分が自伝的な)洞察だね。」

 

 

「この本はドミニカ共和国の歴史、文化、独裁者トルヒーヨについての膨大な脚注で埋め尽くされていて、時にはその脚注がページ全体を占めることさえある。」


「記憶によれば、基本的には実話を再話したものでありながら、そこにたくさんのシュールでサイエンスフィクション的なひねりが加えられている。語り手が格闘する2つの文化やアイデンティティ―古い世界のミスティシズムであるフクーの呪いが、日常的なアメリカ郊外の文脈で展開される様子が描かれているんだ。」


「それと、彼が多作の作家ではなく、作品のバージョンを何年もかけて書き直すという点にも共感したね。それは私が音楽制作を学び、創作プロセスを理解するようになる上で大きな励みになったんだ。」

 

イングランドの北部 ニューカッスルという土地をルーツに、EU圏内を移り住んで来た彼だからこそ文化について客観的な洞察と興味を持ち、それを電子音楽に乗せていることが改めてわかります。そしてそのスタイルは、ジュノ・ディアスのスタイルと、「 オスカー・ワオの短く素晴らしい人生」の内容と共鳴しています。

個人的な話ですが、選書して頂いた本をバーで読み進めていると、少し離れたカウンターの海外の女性が本のカバーを見て「 Junot Díaz...」と呟きました。「知ってるの?」「もちろん」「初めて読むんだけど、あなたはどう思う?」「彼は素晴らしいわ」というやり取りが忘れられません。皆様も是非読んでみてください。


 

店頭でグラシン紙で包まれ、文字の陰翳を朧げに映し出している本がありましたら

是非手に取ってみてください。そして、どんな人が選書したのかお気軽にお尋ねください。

その本を大切に想ったり、その本から人生に影響を受けた人の創った音楽が、

ammelにはあります。

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