The book selection by Tujiko Noriko

 

音楽と本と人の〈あいだ〉を繋げ合う

『lecteur 〈 〉 liseur 』

ammelでセレクトした音楽。それらを創ったアーティストの方々に、選書をして頂く企画です。

第七弾は、フランスを拠点に活動するミュージシャン、シンガーソングライター、映像作家のツジコノリコさまです。2017年にはベルリン在住の映像作家ジョージ・コヤマと共同監督の映画「Kuro」を発表し、自ら主演と音楽を手掛けました。そのインストのサウンドトラックはレーベルPANより2019年にLPとして発売され、ammelでも皆様によくお手に取って頂けています。

そんな彼女に選書して頂いた本が、三冊ございます。

『最後の冒険家』石川直樹

『ダライラマ自伝』ダライラマ14世

『日の名残り』カズオイシグロ

 

 

「日の名残りはとても有名ですね。わたしには彼の本の中でこれが1番の傑作!ダライラマは顔が既にユーモラス。あの顔が、あれだけ訓練を受けた人が、この本の中で俯いて人知れずすごい顔をしている瞬間があるんですよ!石川さんはまだまだいろいろ楽しみで本当にワクワクする写真家ですね!」

「隠されたまま、誰にも届かないまま、埋もれていってしまうような魂の衝動がありますよね。この3冊はそういう瞬間瞬間を写真のように真摯に強く、しかし乾いたユーモラスなタッチで心にいつまでも残してくれます。だからとても気に入ってます。」

「行き先がないだとか、消える、だとか、未完であることは、答えがあることよりもずっとわたしたちのライフに正直に寄り添ってくれている気がします。わたしたちに共感しあえるスペースをぼんやりと与えてくれていると思います。対立に繋がる情報よりもこういったスペースを与えてくれる本は大切。」

 

 

ー西洋哲学に閉口しロシア哲学を選んだということですが、あまり耳に馴染みがない分野でした。西洋、東洋との違いや共通点など、ロシア哲学の特徴で特に印象に残ってる点はありましたか?

「大学で谷寿美教授というとても感じの良いソロヴィヨフ研究の第一人者とも言える方に主にソロヴィヨフの哲学をざっくりと教えていただきました。かなり抽象的で統一的で神秘的、愛に溢れる思想に思われましたし、若者にとっては(そして今も変わることなく。。)カオスでしかないこの驚きの世界に優しく向き合えるような哲学だったというところが印象に残っています。」

「東洋哲学は詳しくありませんが、根本的に神を原点に立てるかどうかの違いがあるにせよ、宗教や科学などの合理性を対立させたり、分解していって抽象化したり、個人主義に重きを置くような西洋の思想、哲学とは違い、2元性は別にポイントじゃないんだけどなあ、、と言う感じ、全体性の追求が原動力にあるようなところは仏教と通じるのかもしれません。」


お話を聞く限りソロヴィヨフの哲学の要素はまさにカオスさを増している今の世界にも必要に感じられますね。俄然興味が湧きました!また、選書して頂いた3冊、どんな折に手に取ったのか差し障りない範囲で教えて頂けると幸いです。

「近年は日本にいった時にばばばっと軽い(軽さ重要)本を買うことがほとんどで、こちらでは美術書や英語でほんの時々小説を読むのみです。どの本もそれを買ったときのことは覚えていなくてショックですー。でも日本に帰ると、必ず絵本、本は買っておかないと!!!って感じです。本屋が楽しい。」
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