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TRiP MAGAZEEN : The Complete Collection 1992-1994
TRiP MAGAZEEN : The Complete Collection 1992-1994
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Peter Wohelski, DJ Three, Grumptronixによる「TRiP MAGAZEEN : The Complete Collection 1992-1994」(2025)です。
1980年代後半、シカゴとデトロイトから生まれたハウスとテクノは、90年代初頭に再びアメリカの地へ戻ってきた。その姿は「レイヴ(Rave)」、つまりハードコア・テクノとして、イギリスやベルギー、ドイツなどによって再構築されたものだった。The Shamen、808 State、Altern-8、The Prodigyといったイギリスのライブ・アクトたちは、多くのアメリカ人が「顔のない音楽」と呼んでいたダンス・ミュージックに“顔”を与え、一方でアメリカのクラブシーンにおけるオルタナティブ・ダンス・ミュージックの時代は静かに幕を下ろしていった。
インターネットがまだ存在せず、同じ趣向を持つ人々とつながることが数クリックでは叶わなかった時代。アンダーグラウンドなダンスカルチャーのニュースは、口コミや「Zine(ファンジン)」と呼ばれる自主制作の小冊子を通じて広まっていった。それらはDJやアーティスト、レコードショップや服屋など、シーンの内側にいる人々によって作られ、配布されていた。
フロリダ中部の都市タンパは、当時アメリカでも有数の豊かなシーンを持っていた。その地で発行されたのが、Peter Wohelski、DJ Three、Grumptronixによる「TRiP MAGAZEEN」である。彼らは1992年から1994年にかけて、急成長するアメリカのレイヴ文化を記録しながら、同時に世界的な動きとも共振していた。全16号にわたるTRiPは、レイヴがメジャーレーベルの商材としてピークを迎え、そして崩壊していく時代のアンダーグラウンドを、当事者たちの視点から伝えている。750本以上に及ぶ多ジャンルのレコードレビューやDJ/ショップチャートは、当時の音楽シーンの精緻な地図を描き出している。
インターネット登場以前の時代に、初期のデスクトップ出版ツールで作られたTRiPは、アメリカ初期のダンスカルチャー誌として60本を超えるインタビューを実施した。Aphex Twin、The Prodigy、Moby、Richie Hawtin & John Acquaviva(Plus 8)、DJ Hell、J. Saul Kane(Vinyl Solution)、Cabaret Voltaire、Orbital、The Orb、Autechre、Laurent Garnier、Dubtribe Sound System、Hardkiss Music、Caspar Pound(Rising High Records)、Mixmaster Morris、Inner City、Terre Thaemlitz(DJ Sprinkles)、Paul van Dyk、Seefeel、Black Dog Productions、Future Sound Of London、Global Communication、Dan Donnelly(Suburban Bass)、Rob Playford、A Guy Called Gerald、そしてレイヴ思想家でありサイケデリック探求者のTerence McKennaといった錚々たる名前が並ぶ。
2年半以上にわたる刊行のなかで、TRiPはDJ Magazine、Mixmag、Jockey Slutといったイギリスの主要ダンス誌、さらにドイツのファンジンSizeなどの注目を集めた。Aphex TwinやFuture Sound of London、Laurent Garnierに関する記事では、TRiPのインタビュー引用がクレジット付きで掲載されている。また、デトロイトのレジェンドでありUnderground Resistance共同創設者のMad Mike Banksからは、「デトロイトのアーティストと作品を真摯に扱ってくれてありがとう」という敬意のメッセージが添えられたポストカードが送られている。
300 pages, 279mm × 216mm, Softcover
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