Ⅱ / Wilson Tanner

Wilson Tannerによる「 Ⅱ (2025 Repress)」LP(2019)です。

漂うような旋律に、ほんの少しの塩気を加えて――。

エレクトロアコースティックの常識を大胆に投げ捨て、Andrew Wilson（Andras）とJohn Tanner（Eleventeen Eston）は、1950年代の川船の上で本作をレコーディングしました。使われたのは、防水仕様の電子機器たちと、長い延長コードという工夫に満ちたセットアップ。

全8曲のコンポジションは、まるで海から引き上げられた混獲物のように、セイレーンやセルキー（アザラシの精霊）、カモメ、そしてエンジンオイルの膜といった海洋のフォークロアを巻き込みながら進んでいきます。
2016年のデビュー作『69』（Growing Bin Records）から進路を大きく変え、本作『II』では、アンビエントな温度が一気に下がる。天候の読めない海へと出航し、やがてポート・フィリップ湾の安全な港へと帰還します。

ソロ・ミュージシャンとしてそれぞれ個別の航路をたどってきた二人ですが、WilsonとTannerの共同ストーリーテリングは、緊張と調和のあいだを漂いながら、細部にまで豊かな叙述を宿しています。

そう、アンビエント、インストゥルメンタルには物語が、舞台が必要です。このアルバムは、大海原の陰と陽を、何回聴いても飽きさせないおとぎ話のように聴かせてくれます(Ammel)